オーツェイド社代表の渡部には大学生になる3人の息子がいる。3人とも現在の若者の例に漏れずスマホに半ば依存した生活を送っているが、彼らはいつも百均のイヤホンで音楽を聴いていた。訳を聞くとそれで十分だから…ハイレゾの話を聴かせてはみるものの、学生の分際でそんな音を聞ける経済的な余裕はないとのこと。
渡部は1963年生まれ。青春時代はシステムコンポーネントの全盛期。彼もバイトで高級コンポを購入し、乾いたJBLの音やタンノイの奥深い音に心躍らせていた。今も彼の部屋には35年前のヤマハのNS1000モニターが現役で鳴っている。彼の世代は高級オーディオ世代、オーディオマニアの世代といえる。
バブル崩壊以降、停滞していたオーディオ業界に新風を吹き込んだ「ハイレゾ」。解像度の高い音は若者達の感性を刺激し、他人と差別化をする彼らの最良のアイテムになりつつある。しかしまだ普及したというにはほど遠い。各社共に「ハイレゾ=高級志向」。渡部と同世代のオーディオマニア達の嗜好品として位置づけられており、とうてい学生が気軽に手を出せる代物ではない。
このままでは30年後の日本のオーディオはどうなるのか?と不安になった渡部。帯域が狭く、解像度の低いそんな音の中で育った息子のような若者達が日本のオーディオ界を背負うことになる。彼は決意した。息子のイヤホンへの挑戦だ。彼らがちょっと背伸びしたら購入できる価格帯で、オーディオのマニア達でさえも納得する音質を兼ね備えたイヤホンを開発すること。彼が目指したものは「ハイレゾ界のユニクロ」だったのかもしれない。
彼は自らが30 年かけて習得してきたエレクトリックセラミックの技術と自身の持つ音の感性を最大限に活かしてハイレゾイヤホンの開発をおこなった。その結果、セラミック独特のピーキーな音を消すためにVSTという技術を考案・特許化する。VST は低価格で驚くほどの解像度と音の広がりを実現出来るイヤホンを実現してくれた。
それが『intime』なのである。彼は思う。『intime』こそが若者達に低価格で本物の音を届けることが出来ると。そして『intime』こそが若者に良い音を伝え、未来のオーディオ界を大きく飛躍させるイヤホンブランドなのだと。